ご主人の浮気問題があり、その後浮気をやめて家庭に戻ってきた……。
奥さんとしては一応、夫の浮気が終わることが一つのゴールでもあるので、ほっとすると思います。
ただそのころから、どうしても過去の夫の浮気に関連する嫌な思い出がどんどん心からあふれてきて、むしろ浮気渦中のときよりもメンタル的にやられてしまう、ということもよく起こります。
夫の過去の浮気を蒸し返してしまうのは「悪」?
ふとした瞬間に沸き起こる怒り、フラッシュバック、再発への不安……そして夫に過去の浮気について話題を振りたくなってしまうのですね。
女とどこに行ったの?女とやってるとき、どういう気持ちがしたの?女のことを一度でも本気だと感じたことはあるの?もしかしてあの日(記念日など)も浮気してた?あの女に何をプレゼントしたの?
すると大抵のご主人は
- もう過去のことだ!いつまで言うの?
- 早く忘れて、これからの俺を見て欲しい
- 前を向いて欲しい、過去を振り返らないで!
- いつまでも蒸し返すな
- しつこい……俺はいつまで責め続けられないといけないの?
- そのことはもういいだろ?楽しいことを考えろよ!
こういった言動で、ウンザリ感を出してきますよね。
そして奥さんは、そう言われてしまうと、いつまでも蒸し返している自分を責めてしまいます。
友だちに相談しても、おおむねご主人と同じようなことを助言されてしまいますしね。。。
- もう家庭に戻ってきたんだから、許しなよ
- 許せないなら、離婚するしかないんじゃない?
- 前を向いて!忘れるのよ!大したことじゃないんだから
- いつまでも浮気をやめない男もいるのに、彼は戻ってきたんだから。それはありがたいことじゃない?
- あなただって、完璧じゃないんだから……
そしてますます、いつまでも蒸し返すことは悪いことなんだと、気持ちを封じ込めようとしてしまうのです。
「忘れろよ!」忘れよう……でも、できない。
「蒸し返すなよ!」蒸し返さないようにしよう……でも、できない。
「前だけを向けよ!」前を向こう……でも、できない。
その繰り返しになり、いつまでも苦しいまま。。。
浮気を蒸し返す=心の傷の回復にとても必要な過程
このサイトでは何度も述べておりますが、夫の浮気に関連する傷ついた思い出は、なるべく思い出した方が、早く心は回復して、前に進めるようになってきます。
これは個人的な意見を主張しているだけではなく、実際に、精神医療の現場でも言われていることです。
心に大きなトラウマを負った人は、徐々に心が回復するにしたがって、そのときの記憶が意識にのぼってくるようになります。
今まで考えることさえできなかったことが、心が元気になるにつれて記憶がよみがえるのです。
それは、皮膚の下に入り込んだトゲが、皮膚の回復とともに上にあがってきて、引き抜ける状態になるのと似ています。
トラウマケアの現場にいる人はそれを知っているため、本人の辛い記憶を引き出すような心理療法をするのですね。
たとえば性虐待の被害を受けた子どもに、人形をつかって、自分がされたことを詳細に再現させるというセラピーもあります。
子どもの人形と、大人の人形を渡して、自由に遊ばせるのです。
そうすると、性被害を受けた子どもは、その人形に性行為的なことをさせて遊び始めます。
(もちろんトラウマのレベルがひどいので、専門家がそばで支えるわけですが)
何度もその「遊び」を繰り返すうちに、少しずつ心の奥にしまい込まれた辛い感情が外に出てきて、そして徐々に癒されていきます。
ただ、これらを専門家でない人がはたから見ていたら「なんてヒドイことをさせるの!?」と、衝撃を受けるでしょう。
「そんなことをしたら余計に傷つくんじゃないの?」と思うのが普通です。
が、実はそうではなく、記憶をあえて思い出し、繰り返し考えることで、(なぜなのかはよくわからないのですが)傷が癒えていく。
心には、そういう機能があるのです。
浮気された奥さんの心の傷も、性虐待を受けた幼児ほどではないかもしれませんが、それと似たようなケアが有効です。
つまり、過去の出来事、過去に言われたこと、過去に感じたこと、それらをあえて思い出して、何度も考えること。
それを繰り返すことで、だんだんその記憶が無害なものへと変わっていきます。
そして奥さんの心の回復と精神的な成長に伴って
「あの時はそう感じたけど、今なら違う解釈もできる」のような感じで、健全な考え方ができるようになっていくのです。
それを経てはじめて、夫の浮気を忘れることができるようになり、蒸し返さなくても済むようになり、前を向いて、楽しいことを考えられるようにもなっていくのです。
一方、浮気した夫本人や、友人や義母などの部外者は、前を向いて楽しいことを考えることが、浮気を忘れる方法だと思い込んでいます。
性虐待被害を受けた幼児が人形で性行為を再現しているのを見たとき、「何してんの!それ、何の意味があるの?」と我々は思いますが、それと同じ反応をするのが浮気夫と周りの人です。
心の傷が癒えるしくみを知らなければ、当然かもしれませんね。
「忘れるのが最善よ」
「思い出したら余計過去にひっぱられる」
「楽しいことを考えていれば、嫌な記憶は薄れるわよ」
普通の人はそう思うかもしれませんが、実際は違って、逆なのです。
忘れようとすればするほど心に残るし、前を向こうと思えば思うほど、過去にひっぱられます。
ですから「蒸し返し」というより、前に進むためのトラウマケアという形で定義しなおして、ぜひ夫とともに過去のことを思い出す作業をしてみてください。
夫の誤解を解き、理解してもらう説明の仕方
ただ、ご主人は自分がやらかした浮気事件を蒸し返されるとなると、罪悪感や羞恥心が刺激されて、逃げの姿勢になると思います。
何度も浮気について聞かれ、何度も責められると
- 妻はこれからも、ずっとこのままかもしれない
- 浮気について語れば語るほど、その記憶が強化されて、むしろひどくなるに違いない
- 妻が思い出すごとに、もっと俺は嫌われていくに違いない
- 俺を責めることで、妻は楽しんでいる(復讐している)のかもしれない
- 一生このまま、罪をつぐない続けるしかないのか(だったらいっそ、離婚したほうがいい)
このように誤解することでしょう。
こうなってしまうのも無理はありませんので、事前に(お互いが冷静なときに)ご夫婦で話し合われるといいですね。
そのときは
- 過去の浮気のことを詳細に知って、自分のなかで理解して、しっかり受け止めていくことによって、元気になれると思う
- いつまでも続くわけではなく、気が済む日が必ず来ると感じる
- 思い出して何度も語ることが、心の回復につながるらしいと本で読んだ
- あなた(夫)を責めているのではなくて、私が前を向いて生きていくために必要だから蒸し返している
このような内容のことを伝えられるといいですね。
二人の間の誤解を解き、前向きな意図を持って、ご夫婦の間に起きた浮気事件を思い出していくこと。
その過程も、夫婦修復の一つだと思います。